三島由紀夫 / 1954年
三重県鳥羽市の神島を舞台に、若い漁師と海女の娘の純愛を描いた青春小説。島の自然と素朴な人々の暮らしが生き生きと描かれている。
映画化
「潮騒」映画版
歌島は人口千四百、周囲一里に充たない小島である。
灯台の光は規則正しく暗い海を照らしていた。
海は今日も静かだった。
島の男たちは海を怖れ、海を愛し、海に生きてゐた。
燃えさかる焔の向うに、初江の姿が見えた。
海はすべてを浄化し、すべてを生かす。
潮の匂ひが濃くなると、島が近づいた証拠だった。