川端康成 / 1952年
鎌倉の茶会を舞台に、父の愛人だった女性と息子の危うい関係を描いた川端の代表作。鎌倉・円覚寺の静謐な茶室が物語の中心となる。
千羽鶴の風呂敷をひろげると、絹ずれの音がしんとした茶室に響いた。
千羽鶴の風呂敷包みを、彼女は静かに差し出した。
石段の上から見下ろす参道は、遠い記憶のように霞んでいた。
島影に沈む夕日を、二人は黙って見つめていた。
私はその人を常に先生と呼んでいた。
円覚寺の境内に、秋の陽がさしていた。