中野重治 / 1939年
福井出身のプロレタリア作家・中野重治が、青年時代の文学への目覚めと故郷への思いを描いた自伝的小説。雪深い越前の風土と九頭竜川の流れが原風景にある。
故郷の九頭竜川は、春になると雪解けの水で溢れた。
雨の降る品川駅のプラットフォームの人込みの中から遠く九頭竜川の水を思ふ
丸岡の城の石垣に苔が生え、冬の風が吹き抜けた。
雨の降る品川駅。ふるさとの風景が、瞼の裏に浮かぶ。
遺跡に立てば、滅びた文化の声が風に乗って聞こえてくる。