吉田修一 / 2018年
長崎のヤクザの息子が歌舞伎の世界で「国宝」と呼ばれるまでの壮絶な人生を描いた大作。長崎の中華街やグラバー園が物語の出発点となる。
芸の道に終わりはない。
長崎は坂の町であり、光の町であった。異国の風が吹くこの港町に、二人の天才が生まれた。
中島川に架かる眼鏡橋の石の欄干に腰を下ろすと、水面に映る二つの半円が美しかった。
諏訪の森に響く太鼓の音が、俊介の体を芯から震わせた。これが国宝の芸だ。
ステンドグラスを透かした光が堂内に降り注ぎ、長崎の祈りの深さを照らしていた。